RESEARCH

本研究室では、熱エネルギーを利用した省エネルギー技術や、ヒートポンプ・冷凍サイクルのシミュレーションと実験、活性炭などの高機能吸着剤を利用した応用技術など、省エネルギー、環境負荷低減を図る研究開発を行っています。

ヒートポンプ Heat Pump/Refrigeration

研究内容

ヒートポンプは、エアコンや冷蔵庫など身近な家電の原理です。スーパーやコンビニの冷凍冷蔵ショーケース、ビルの空調など、小型から大型までヒートポンプ機器の規模は幅広く、また、使われる温度帯も様々です。
近年、ヒートポンプに使われるフロンガスは温室効果ガスの一つであり、その漏洩による地球温暖化への影響が無視できないレベルになってきていることがわかりました。そのため、温室効果の高いフロンガスを生産・消費しないように規制が始まっています。現在は温室効果の極めて小さいフロンガスの開発も進んでおり、徐々に使われ始めています。
しかし家庭用エアコンでは、地球温暖化係数が677(二酸化炭素の677倍の温室効果を持つということ)の冷媒が主に使われていますし、家庭用よりも規模の大きい業務用エアコンでは、地球温暖化係数が2000に近い旧来の冷媒を使っている例が未だ多くあります。エアコンの冷媒を温室効果の小さいフロンガスと単純に入れ替えると、冷媒の物理的な性質に違いがあるため、大抵の場合はエアコンの性能が落ちてしまいます。エアコンの性能が落ちるということは、これまでと同様な冷房・暖房能力で使用すると消費電力が増えるということなので、発電に起因する二酸化炭素の排出を増加させる結果となります。
そこで本研究室は、温室効果の小さいフロンガスを使ったヒートポンプ機器の性能向上を目的に、冷媒の物理的性質がヒートポンプ性能に与える影響を実験によって解明することや、シミュレーションによって新たな冷媒を用いたヒートポンプの性能を予測することなどを実施しています。

吸着ヒートポンプ・蓄熱 Adsorption

研究内容

吸着剤は乾燥剤や脱臭剤としてよく使われる材料です。その吸着剤をエネルギー変換・貯蔵に利用すれば、温室効果ガスの排出抑制や省エネルギーに大きく貢献する次世代の技術を生み出すことができます。
吸着冷凍機・ヒートポンプは、電気ではなくポットの保温と同じくらいの温度のお湯を消費して、冷房や冷凍冷蔵に利用できる“冷熱” を作り出す技術です。吸着剤が冷媒蒸気を吸い付ける力を利用して、冷媒液の蒸発を促進させることができます。液体が蒸発する際に周囲から熱を奪うので、周囲は冷却されることになります。冷媒蒸気を吸い付けた吸着剤を加熱すると、吸着剤から蒸気が放出されます。放出された蒸気を冷却すれば、元の冷媒液に戻ります。これらの現象を上手く利用する仕組みを作ると、エアコンや冷蔵庫と同様なヒートポンプ機器を構成することができます。
蒸発した冷媒が吸着剤にくっつく( 吸着する) 際には熱を放出します。この熱を暖房や加熱に利用できます。吸着ヒートポンプによる暖房・加熱の場合は、高温の熱を消費して給湯温度程度の熱を作ることになります。温度レベルは下がるのですが、熱量を増やすことができます。また、原理的には温度を上げるヒートポンプにすることもできます。この場合は熱量が少なくなります。
吸着ヒートポンプには、冷媒の蒸発と吸着、吸着剤からの冷媒放出(脱着または脱離と呼びます)と凝縮の2つの工程がありますが、それらの工程を時間差を空けて実行すれば、蓄熱システムとなります。つまり、脱着のために投入した熱を別の時間帯に吸着熱として取り出すことができます。
吸着ヒートポンプ・蓄熱は、主に100°C未満の熱を有効に活用するための技術です。しかし、電気で動く利便性の高いエアコン等の代わりを務めるためには、さらなる性能向上が必要です。そこで本研究室では、性能向上の鍵となる吸着剤に着目し、材料科学分野の先生方と共同でヒートポンプ利用に適した吸着剤の開発や、新材料を使った吸着ヒートポンプ・蓄熱システムの性能実証・解析などを実施しています。